からすのてんぷらやさん

かこ さとし (著, イラスト)

【本当の優しさとは?】⇒『からすのてんぷらやさん』

「カラスから何を連想しますか?」と聞かれたら、
あなたはどのように答えるでしょうか?

あなたの答えは全て正解です。

ただ、どうしてそれを連想したかというと、
多くの場合は、
これまでに見聞きしたことや親から言われたことなど、
「過去の体験による思い込み」が原因です。

絵本は大切な疑似体験であり、
子どもの潜在意識に影響を与えるものです。

だから、子どもの頃に絵本をたくさん読んでもらった子どもは、
物事を肯定的に受け取れる可能性が高いのです。

カラスから肯定的なイメージをした人は、
かこさとしさんの『からすのぱんやさん』を読んでもらった人かもしれません。

『からすのぱんやさん』は、今から40年以上前の1973年に発行されました。

そして、今でも愛され続けている絵本です。

この絵本は、当時のソビエトの優れた舞踊団であるモイセーエフ舞踊団の演目、
組曲「パルチザン」に影響を受けて描かれた絵本です。

『からすのぱんやさん』のあとがきには、次のように書かれています。

「パルチザンの情景が詩情豊かに息もつかせぬ民族舞踊でつづられた作品でした。

(途中省略します)

そこに登場する兵士・労働者・老若男女の一人ひとりの人物描写が、
こころにくいまでに人間的なふくらみとこまやかさで舞踊的に描き尽くされているに、
ひどく心を打たれました。

個々の生きた人物描写と全体的への総合化の大事なことを、
わたしはモイセーエフから学び、さて、
からすの一羽一羽に試みてみたのがこの作品です。

どうかそんなわけですので、もう一度からすたちの表情をみて笑ってください。」

このようなバックボーンがあって描かれた絵本ですので、
感性豊かな子ども達には、この内容の深さが、
潜在意識レベルで伝わるのでしょうね。

そして、『からすのぱんやさん』発行から40年経った2013年、
4羽の子ども達が大きくなった後のお話が、
続編として発行されました。

本日紹介するのは、その中の1冊、
『からすのてんぷらやさん』です。

あらすじ

いずみがもりに「からすのパンやさん」がありました。

ちいさかった4わの子どもたちは、
おおきくなってりっぱなわかものと、
きれいなむすめになりました。

火事でお店がやけてしまい、おちこむてんぷらやさんを励ます、
心やさしいレモンちゃんのおはなし。

<Amazon.co.jpより>

子育てワンポイントアドバイス

いずみがもりの かえでどおりの天ぷら屋さんが家事になり、
天ぷら屋さんのうちは残らず燃えてしまいました・・・。

天ぷら屋さんの奥さんは行方不明、
息子さんは目が見えなくなってしまうという、
絵本とは思えない衝撃的な状況から、
お話はスタートします。

そんな時、からすのぱんやさんの子ども達、
レモンちゃんとオモチちゃんは、
天ぷら屋さんにあるお申し出をします。

「コミュニケーションが上手になりたい」
「子どもにコミュニケーション力をつけたい」
このように考える親御さんは少なくないようです。

ただ、本当のコミュニケーションとは人間力であり、
人間力とは、お互いに助け合い、補い合うことなのではないでしょうか。

80歳を超す作者のかこさとしさんが、戦災や震災の時の体験を元に、
描いた絵本です。

この絵本を読むことで、「本当の優しさ」「思いやりを態度で示すこと」
など、人間として大切なことを親子で学べます。

『からすのぱんやさんシリーズ』は、現在5冊出版されています。

この5冊に共通するのは、次のステップだと私は思います。

ステップ1.「欲しいものを言葉に出して伝えること」

→ステップ2.「欲しいものを聞いたらそれに応えること」

→ステップ3.「欲しいものを伝えた人もそれに応えた人も幸せになっていること」

世の中には、「機嫌を悪くすること」や「すねること」で、
相手の関心をひこうとする人がいます。

でも、そうしてしまうと、自分も周りの人も、
ネガティブな気持ちになり不幸になります。

だから、欲しい物ややって欲しいことを口に出すことで、
自分も周りも幸せにするコミュニケーションがつくように感じます。

『からすのぱんやさんシリーズ』の5冊を親子で読むと、
欲しい物ややって欲しいことを口に出すことで、
自分も周りも幸せにするコミュニケーションが、
自然に身に付くのではないでしょうか。

▼ご参考(発行順にご紹介します)