日本の昔話

おざわ としお (再話)赤羽 末吉 (画) 福音館書店

昔話は、全国各地で伝えられていた話で、
道徳、善悪の問題、良心、美徳、親切心、罪の意識、
倫理観、人の道をわかりやすく伝えてくれる物語です。

筑波大学名誉教授で、口承文芸学者の
小澤俊夫さんは、朝日新聞の取材で次のようにおっしゃっていました。

昔話は、簡単明瞭な語り口によって、さまざまなメッセージを発信している。

重要なのは、
1子どもや若者はこうやって成長するんだよ
2人間はこうやって自然の中で生きているんだよ
3人間を含めて動物の生命はこうやって成り立っているんだよ
という3つのメッセージである

昔話や昔話絵本を選ぶ時、
簡単明瞭な語り口のものを選び、
教訓を前面にだしたものは避けることが大切である。

昔話は、教訓よりも、強く生きろということに重点を置いている。

なぜならば、人間が成長するときの基本的な問題を語ることが多いからである。

小澤俊夫さんの取材は以上です。

つまり、昔から言われている事には、
何らかの注意や意味があるようです。

だから、昔話にも、理屈では計り知れない、物事の真理が隠されていて、
子どもは、それを繰り返し聞くことで、
「優しさ」や「思いやり」や「人のために尽くすこと」など、
人生で大切な「なんとなく」ということを学ぶように、私は実感しています。

だからこそ、昔話は、話を端折ったりラストを変えているものではなく、
しっかりと考察している本を選ぶことが重要です。

でも、昔話の絵本を1冊ずつ吟味して選ぶのは、
子育て中の親御さんには、大変なことだと思います。

私がお勧めするのは、福音館書店の「日本の昔話」です。

この本は、絵本ではありません。

全部で5冊あります。

1冊に50?60話の昔話が掲載されている本です。

1話あたり10ページ前後ですので、お子さんが眠る前に読んであげるのに最適な長さです。

巻末には、昔のお道具の絵と名前が書かれています。

日本の昔話には四季を描いた内容も多いので、
おおよその四季にしたがって、5巻にわかれて記載されています。

第1巻は正月から春を感じさせる話、
第2巻は田植えを中心に初夏の話、
第3巻は夏の話、
第4巻は実りの秋の話、
第5巻は冬から大みそかにかけての話、

そうして、1年が過ぎ、第1巻から1年が始まります。

シャワーのように昔話を親から聞かせてもらうことで、
道徳、善悪の問題、良心、美徳、親切心、罪の意識、
倫理観、人の道などの素晴らしいメッセージが、
お子さんの潜在意識に宿ります。

この本の再話は、おざわとしお(小澤俊夫)さんです。

余談ですが、小澤俊夫さんの弟は世界的な指揮者の小澤征爾さん
息子はミュージシャンの小沢健二さん、
甥は俳優の小澤 征悦さんです。

この本の絵は、福音館書店の「ももたろう」で有名な、
赤羽末吉さんです。

このような本は、胎教からお子さんが生後6カ月くらいまでは、
語りかけの代わりに読むことができますし、
お子さんが4歳を過ぎると、集中して聞いてくれることが多いようです。

親がこのような本を少しずつ読んでくれることで、
子どもは、文字が多い児童書を自分で読む習慣も身に付くのではないでしょうか?