注文の多い料理店

宮沢 賢治 (著)

【情報編集力を学べる】絵本

タイトルのはじめの文字が、
あいうえお かきくけこ と順番に紹介をさせていただいています。

今回は【ち】で始まる絵本を紹介します。

日本の小学校や中学校では、
国語・算数(数学)・理科・社会・(英語)
の主要科目以外に、
体育・音楽・図工(美術)・(技術)家庭科
などの教科もあります。

それはなぜだと思いますか?

東京都初の民間人校長として杉並区立和田中学校の校長を務めた、
藤原和博さんは、
学校の勉強で、
「情報処理力」と「情報編集力」を学ぶと
おっしゃっていました。

決まった答えを導き出すのが
「情報処理力」です。

これは、
国語・算数(数学)・理科・社会・(英語)の教科でおもに育まれます。

あるものとあるものの関係性の発見能力、
意味のある情報どうしをとってきて、組み合わせ、
組み替える能力を、
「情報編集能力」です。

これは、
体育・音楽・図工(美術)・(技術)家庭科
の教科でおもに育まれます。

絵本は、
挿絵という美術と、
物語という国語で、
「情報処理力」と「情報編集力」の両方を学べる絵本です。

物語は読む人によって、
解釈が違うのは面白い点だと感じますが、
いかがでしょうか。

今回紹介する
宮澤賢治作の『注文の多い料理店』は、
タイトルを聞いたことのある人が多い有名な物語だと思います。

二人の紳士が入った「山猫軒」という西洋料理店は、
「当軒は注文の多い料理店ですから、どうかそこはご承知ください」
と書かれていました。

それを
「注文があまり多くて手間取るけれどもごめんください」と、
紳士たちは善意に受け取ります。

しかし、扉を開けるたびに、
「帽子と外套(がいとう)と靴を脱いで下さい。」

「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、
その他金物類、
ことにとがったものは、みんなここに置いてください。」

「壺の中のクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」

など、つぎつぎに注文が書いてあります。

実は、ここは、
お客様が料理を食べるのではなく、
お客様を食べる料理店だったのです。

この2人の紳士は、死んだと思って置いてきた2匹の犬に助けられます。

しかし、恐怖のあまり紙くずのように(しわに)なった、
二人の顔は、元に戻りませんでした・・・。

というお話です。

私は、
「『おかしいと思ったら引き返すことが必要』という学びのお話」
と思っていました。

しかし、解釈を調べると、
色々な意見があることに驚きました。

「二人の若い紳士」を当時の富裕階級になぞらえて揶揄している。

紙くずのようになった二人の顔」がもとにもどらないというのは、
トラウマをあらわしている。

騙される手口。

「食べられる側の痛み」を感じさせる批判。

など、他にも多数ありました。

たくさんの解釈ができるのは、
抽象度が高い物語だといえます。

色々な解釈ができる物語を読むのは、
情報編集力を育むのに役立つことの一つかもしれません。

そして、この絵本は、
島田睦子さんの木版画がとても素晴らしいのです。

絵本をめくるだけで、
絵が活き活きと語りかけてくれます。

大人は解釈をしてしまうかもしれませんが、
ありのままにインプットできる時期に、
このような絵本に親しむことで、
子どもは「情報処理力」と「情報編集力」の両方が育まれます。

一石二鳥ですよね♪